新しい命と私

長男がお腹に入り、それまでの当たり前を一度捨てました。

 

「私は母になる」

仕事を辞め、主人が一生懸命仕事ができる環境を作ろうと必死でした。

いつも穏やかでいてくれるように

理想の妻になりました。

毎日、顔色をうかがいました。

あなたのおかげで生きていられますと示しました。

私の方が勤務時間が長く、お給料も高く、好きなことをして楽しく仕事をしていたから・・・

彼にとっては屈辱的で、夫としての立場がなかったからです。

彼の自尊心というものを

私がイキイキと生きていることで傷つけていたのです。

 

「夫婦って何だろう」

漠然とした疑問にあえて答えは見つけませんでした。

 

赤ちゃんがお腹を蹴るたびに、私はただただ幸せだった。

母になる決意だけは間違っていなかったと。

 

3日がかりで産んだその命は

私に「生きててよかったんだよ」と教えてくれました。

 

「この子に生かされる」

神様からのお告げだったかもしれません。

一生懸命、命がけで

おっぱいを吸う、泣く、笑う・・・

私を母として求める息子の姿は想像していたより、はるかに愛おしく、

命を分けた感覚でした。

 

これからはこの子の為にも・・・

前向きになれたのはほんのわずかでした。

母性を求めて泣く我が子を前に主人が嫉妬し始めたのです。

 

「なんで俺じゃ泣き止まないんだ?」

「なんでお前じゃなきゃダメなんだ?」

私が抱いて微笑む息子をどうしていいのか分からなくなりました。

主人が仕事に行っている間、息子と二人になれる時間がとても幸せ。

三人になると、また主人が嫉妬しないように息子と距離を置いて顔色をうかがう、

そんな毎日が続きました。

私は私じゃなくなりました。

主人の生活の中の登場人物にしか過ぎない。

無意識に外から自分を見て、これでいいのか、怒られないか、機嫌を悪くさせないか、

行動を自分でチェックするようになりました。

決して、それは愛情でなく、ただ怒りの矛先を自分に向けてほしくないという

防御的な行動でした。

 

「私は愛されているのか?」

女として私を求めてくる主人を、いつの間にか受け止めることが出来なくなりました。

頭の中で分かっていても、からだがついていけなくなりました。

 

誰もいない昼間、ぽかぽかの陽が差し込む部屋の中で、

息子の寝顔を見るたびに、思うのです。

「このまま時間が止まったらいいのに」

 

ここから9年間の引きこもり生活が始まります。

 

掛け違えたボタン

私は36歳で13年間の結婚生活を終わらせました。

「ママ、3人で暮らそう」

当時、小学校4年生の長男の言葉です。

私が泣いてばかりいたから・・・

 

この人だと決めて結婚したのに、

「お前がイキイキしてるとむかつく」という元主人の言葉で

私は自分を殺しました。

 

仕事を辞めました。

外に出ることを極力避けました。

笑えなくなりました。

子供を作り、私は子育てをするんだと決めて家に引きこもりました。

母に、「理学療法士になるためにたくさんお金使ってくれたけど、辞めないかん。ごめん。」

 

「一生、添い遂げる覚悟ならそうしなさい。」

母はそう答えてくれました。

就職してまだ2年目の秋。

母は女性としての生き方を知ってのことだったかもしれません。

でも、本当になりたくて就いた職業。

憧れの家庭を築くことも夢だったけど、何が何だか分からなくなりました。

 

「私はどうなりたいんだろう」

「こんなはずじゃなかった」

自問自答する毎日、後悔の毎日でした。

 

 

 

 

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